今日は恐怖のオカンが故郷から戻ってくる日……。
たった4日間ですが、ここで皆で、ご無事の帰途を歓迎しなければ、どうスッ転ぶかわからない恐怖が襲いかかります。
何がコワイって、オカンのマシンガントークです。まちがいなくオカンのオカン、つまりばあちゃんとモメて帰ってくるにちがいないのですが、モメるといっても、オカンはばあちゃんに一切合切さからえないわけで、つまり、東京でワガママし放題のオカンはストレスの塊となって舞い戻ってくるわけで。
あちらから一度もメールや電話がなかったことから、吉とでるか凶とでるか、予想もつかない不安が襲います。しかしここでシカトぶっこいて実家に寄らずに我が家へ戻ることは、自殺行為に等しい。
でもこわい!
なので、もしかしたらと思い息子に電話してみました。
すると彼は実家に監禁され、今現在、オカンは泣きながら誰かに電話してると言うではありませんか。しかもその前にはワケのわからないバカ息子オンにさえ延々とグチをこぼしていたといいます。さらに私を震え上がらせたのは、人の話など一切聞かないことで有名なオンでさえなぜか逃げられない、そんなオーラをオカンは発していたようなのです。
「とにかくこっちにこいよ」と力なく言う息子に従い、重い足を実家に向けざるを得ませんでした。
ドアを開けた瞬間に、マシンガントークがおっぱじまると思っていた大方の予測をくつがえし、オカンはフヌケのようにこう言いました。
「私、ちょっと頭がおかしいのよね……」それはとうの昔から存じ上げております。しかしそんなそぶりさえ微塵もみせず、心の中でほくそ笑んでいました。どうやらあまりにもひどい仕打ち(彼女曰く)に合いすぎて、記憶が定かでなくなったなどとほざいています。まあパワーがないのは吉報です。
しかし!
「アソビの顔を見たらほっとした!」と言い出し、その後に徐々に記憶をたぐり寄せペースアップを図るオカン、もちろん私が鼻くそほじろうが、アクビしようが、イビキをかいて寝ようがおかまいなしにしゃべるわけですから、ただ黙って目の前にいればいい、影武者だって、私の等身大フィギュアだって彼女の前に存在すればいいわけです。
遠くから私に「バトンタッチー」と言うまなざしを向けるオン。その視線に、吹き出しそうになるのをこらえながら、(そんなことをしたら殺されかねませんからね)オカンの話を流し聞きしていたら、今度はどうやら私に矛先が向いてきたようです。
「どうせ自分は関係ないと思ってんでしょ!」「ばあちゃんに似てると思ってんでしょ!私だって似てると思ってイヤなのよ!ゲロ吐きそう」「まだばあちゃんの事がすきなの!?アンタのことだって『あんだけかわいがったのに冷たい』って悪口言ってたんだからね!」
と狂ったように捲し立てているところへ、なんとオトンから私の携帯へ電話が……
「おい、今日はママ任せたぞ」「やだ」「すごいだろう、マシンガントークだろう」「いやグレネードランチャー。あ、いやロケットランチャー」「オレはまだ帰らないぞー」「やだ」それを聞いていたオカンは見事に察したようで、「みんなで私をバカにして!バチがあたるんだから!」とトチ狂っていました。
そして、その場にいた五十嵐(オンの父)が、話の途中で何度か「じゃ!(帰ります)」と言ったのをシカトしておいて
「あら?ドンベ帰ったの?私の話がすごいから、隠れて帰ったのねー!!!ああ!呆れられたのねー」と被害妄想もふくらませるオカン、だいじょーぶでしょうか。いやだいじょーぶじゃ決してありません。
さっきオンから連絡があり、ソファーで放心状態だそうです。私の次の訪問のためにパワーを温存しているのかと思うと恐ろしくて夜も寝られません。