弟から、仰天かつ"この世の楽園的な話”を聞きました。
通勤途中、近所の団地の木陰から、
「だーるーまーさんがーこーろーんだっ!」
と声が聞こえて振り返ったそうです。
ハッ!と一瞬動きが止まってしまうようなおっさんの、それはそれは大きな声でした。
おっさんは、団地の階段あたりの壁に寄りかかり、「だるまさんがころんだ」的に言うところの「鬼」の役割をしていたそうなんですが、彼の目線の先には誰もいません。
「こりゃ基地外か……」と思い先を急ごうとしたその瞬間、男と遊んでいるお相手が判明したとのこと。
聞いて驚くなよ、その相手とは、なんと、カラスだったのです。
しかもちゃんとカラスは前へ前へとピョンピョンピョンと三歩進んで、「だーるーまーさんがー」あたりでピタリと止まっているというのです。
そんな夢のような話があるものか。と思いました。
弟はバカですが、バカだけにこのテのくだらない嘘はつきません。なによりも想像力がない。しかもこともあろうことか、後輩ことキム兄と一緒だったのですから二人で幻を見るはずもないのです。
私の推測では、おっさんはおそらく誰かが通りかかるたびに、この曲芸をご披露したく、ことさら大きな声で「だるまさんがー」と言っているはずです。なぜなら私なら100パーそうするからです。
私たち家族はここでもまた口論となりました。なんで写メを撮ってこないのだという文句に始まり、議題「おっさんがえらいか、カラスがえらいのか」
どっちがよりえらいかで乱闘になりかねない勢いでした。
こんなに幸せそうな、童話のような話をしたというのに、この有り様……結論は出ませんでしたが、少なくとも、おっさんとカラスよりも私たちはえらくない、ということだけは明白だと思います。