奇跡が起きた。
バスに乗り、いつものように最後の席を陣取ろうと闘牛のように突き進むはずの私の足が、ぴたりと止まった。いたのである。シルバーシートにちょこんと浅く腰をかけたママ・フラッテーリが!
黒のベレー帽と服、赤毛のボブスタイル、この輪郭に緩やかに曲がった小さな背中、どこからどうみてもママ・フラッテーリ。この写真を葬式の時に使っても、誰もちがいに気付かないはずだ。それくらい瓜二つだった。日本人だけど。
ママ……のドッペルゲンガーは、終始にこやかで、次々と乗車する人々に温かい笑顔をくれていたが、それが実に薄気味悪かった。それからママは、となりに座った上品な老女にターゲットを絞り、延々と話していたようで、最後には「100歳まで長生きしてね!ぜったいよ!ぜったいね、100歳までね!」と金切り声で叫びつつ、足を引きずり引きずり「イタタタタッ!」と大騒ぎしてバスを降りた。どこまでもママ・フラッテーリだった。
ついでに本物のママことうちのオカンの話。
ビールの缶を持ちながら「ちょっとこれ、【これはお酒です】って書いてある!これがお酒!?これがお酒だって!!」と大騒ぎして家族ひとりひとりの目の前に差し出すのだった。
どうやら60何年もの間、「お酒イコール日本酒」だと思っていたらしく、どっからどうみてもビールの缶なのに、日本酒が入っているのか!?とコーフンしたらしい。みんなシカトしていたが、この騒ぎからみても、老女というのは総じて大騒ぎする生き物なのかもしれない。すべてがママ・フラッテーリなのかもしれない。
その後、みんなにバカにされ、「これはお酒です」についていまひとつ納得できない様子のオカンにとどめを刺すため私は行動に出た。証拠を見せつけようとケイタイで調べたのだ。ウイスキー、カクテル、甘酒はもちろんのこと、どうやら「みりん」にも「これはお酒です」と表示されることがあるらしいとわかった私も「じゃあ未成年はみりんを買えないのか!?」とここで大騒ぎ。ママ・フラッテーリ予備軍だった。いやもうすでにママ・フラッテーリなのか。そんなまさか。
ユニークな、ペットと記念写真
ペットを愛するあまり頭がおかしくなる人っているよね……。
オカン、「おチンチンちょうだいちょうだい!」と犬の股間を掴むフリをして「ウウウー」と唸るモッシュとのやりとりを「芸」だとして私の友人らに見せつけるのやめていただけませんか。
犯罪者の刺青標本
コラかと思ったのは、私だけではないはずだ。