たとえば新宿から恵比寿に行くのに、わざわざバスに乗って渋谷まで行き、そこから山手線に乗りかえて恵比寿に行く奇行で有名な私ですら昨日は山手線に乗った。
「カモン!」「みんな~! 両手あげてーー!」「声出せ~」
をリピートする"カモン"という曲があるのだが、あれだけの観衆がまるっと全員ひとっこひとり手をあげないというウワサの儀式、マジだった。ある種、うれしいガマン大会のようだったけれども、意外とあげにくいようなタイミングの曲である気もしないでもない。ボーカルと観客の、食うか食われるかの戦場だ。
最後のフレーズ、キます。
ラストに"スキルアップ"を持ってきて、歌詞の一部である心ない「ありがとうございます! 」を切実なかんじで叫び続けるのも、本気なのか? イヤどうなんだ、いやいやそもそも歌詞だしねって混乱をきわめた。
あの声でアリガトーと叫ぶ。こっちは泣きそうになる。いやこれは歌詞だぞ? しかもおちょくってんぞ? と我にかえる。また感極まる。自分でもアホかと思う。
どうしようもない日常や感情、あたりまえの鬱憤や卑屈、それをうまいぐあいに拾いあげて奇奇怪怪な文言を並べてみたり、ああでもないこーでもないと揶揄してみたり"ぬりえ"をするのがいわゆるリリックだとすると、吉田君の場合はなんだろう。本音か。
誰もがよく見るシーン。みんなが使っているコトバ。完璧じゃないダメな自分と大きく見せたい自分。野球部に対する帰宅部目線。セックスに対する欲望と絶望。嫉妬と軽視のまざりあった、落ちつくことのできない不可解な感情は、小学生でもわかるふつうの言葉を使って"よく見る風景"をそのまま描写することでまんまと昇華させている。
宮部ファイヤーだ
ミュージシャンが、あたりまえのことや出来事をそのまま歌詞にするのはかなり勇気のいることだと思う。きっとむずかしい。表現者としてのプライドが、どうしても阻むだろう。それをいともカンタンにやってのけている。しかもだらしなく。スゲー。
もはや言葉にすることもないような「あたりまえ」のことをタイトルにもってきているので、少し抜粋してみた。
・今日は寝るのが一番よかった
・ゲームしかやってないから
・なんかしゃべんないと友達になれない
・パチンコがやめられない
・トラックに轢かれた
・次やったら殴る
・中一からやり直したい
・ちゃんとしないと死ぬ
・SEXはダサい
・普通は走り出す
チョイスして思ったけれど、もうこれだけで笑えてくる。ものすごく計算しつくされた技法だったらどうしよう。まあいいか、どっちでも……。
歌詞は、いいメロに乗ってはじめて「ああ、いい詩だな」と思うことができる。これは絶対的にそうだと思っている。
吉田君の歌詞がウグワーーと響くのは、曲の力も半分ある。
で、ほぼ作曲を手がけているギターの鳥居さん。初見だったけれども延々と渋い顔でギターを弾いていて、実にかっこよかった。
ちなみに最新のアルバムでは、"漁師の手"がファンクで好きだ。
トリプルファイヤー『FIRE』徹底解剖!!
スカート澤部を迎え、鳥居真道とともに語り尽くす
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はぁ……。んではTwitterまとめに。
2017/11/18