2019/06/18
駅のエスカレーターを登りきったところに白い物体があった。
「うわっ、ゲロか」
と目をこらす。
この世で一番きらいなものは他人のゲロだからこういうときはやたらと敏感なのである。
よく見たらラップに包まれたおにぎりが無残な感じでつぶれていた。
ペチャンコとは、こういうことを言うのです、と自ら具現化したようなおにぎりだった。
エスカレーターだから次々に人がやってくる。
写真を撮るのはやめておいた。
急いでいた落とし主が、拾う間もなく電車に飛び乗ったのかもしれない。無念だったろう……。
ホームの端を目指して歩いていたら、違和感を感じて立ち止まる。
それはインターフォンではない。
そして落とし主は無念ではなかった。
むしろおにぎりが無念だった。
というか、作った人が無念すぎる。
もらったはいいけど、食べたくなくて次々に捨てていったとしか思えない連続おにぎり遭遇事件。
いらないなら、もらうべきではない。
いらないと言え。「いらない」と。