笹塚の病院へ向かう電車の中でうっすら思っていたこと。
友人の克子(笹塚近辺在住)を呼び出してランチでも行こうかな......んーでも急だし、彼女のことだからもうどっか出かけてるかもな〜でもあとで連絡してみよっかな〜。
そんな感じで病院へ行ったら、待合室に克子がしれっと座っていた。本来のわたしなら病院であることをまるっと忘れ「わーーー! いたのーーっ!?」と奇声を発して周囲の顰蹙を買うところだが、何か発したような気もするけど自分的には動じずすっと隣に座った。わりと奇遇なことなのに、ほぼ驚かなかったのである。なんだろね。
「おわったらごはん行く?」と言ったら「もちろん」と即答されてさすが克子先生、と思った。薬局を出て「どこ行く? パスタかステーキどう?」と言ったら「は? まずお茶でしょ」と言われまして、さらに克子先生の位が上がった。先生曰く「ドトールより少し高級なところ」に行って彼女はコーヒー、わたしはみかんジュースを飲んだ。店を出たらすぐ「肉だ、肉! 肉!」とステーキ屋に行き、互いに「ライス、大にすればよかった」とか言いながらバカスカ食べた。ステーキをあっという間に平らげたあと、克子がウェンディーズに行こうと言いながらもまっすぐロッテリアに向かっていたので先ほど上がった先生の位はまた少し下がった。ロッテリアは店内席の空きは大いにあるのにやたらとレジに人が並んでいる。先生によると、若者はクーポンが好きなのでそれで混雑しているのだと言う。たしかに、会計時には何種類もクーポンが付いているミニチラシを店員さんからもらった。「なるほどですね」と思ってそのまま捨ててしまったが、また位が上がったことは言うまでもない。金持ちこそクーポンをちゃんと利用するのでわたしはいつまでたってもバカな貧乏だ。そして最近の若者は大変立派ですね〜という話をした。アイスコーヒーを飲んでいた克子が、「ドトールのよりぜんぜんおいしくない。自分で作った方がマシ」というので見たらアイスコーヒーは完全にアイスティーの色をしていた。その時は別の話でそのままスルーになったけど、あれはどう見ても紅茶の色だった。もしかしたらまちがえていたのでは? そりゃまずいでしょ、などと今頃思っているので先生の位は今は地に落ちている。
みんなそうだろうけど、街でバッタリ出会うというシチュエーションが好きだ。今は地元から離れてしまったのでこのバッタリがほとんどなくてさびしい。友達や、友達の家族、弟の同級生らに道で出会って立ち話なんてことにはほとんどならない。せいぜい自宅マンションの管理人さんとか、仕事場のオーナーさんやお隣、上の人くらいだ。これは確率的に「バッタリ」というレベルではない。
そこで、今まで1番のバッタリをいろいろ思い出そうと今少し努力してみた。どこか旅行先で誰かに会ったことがあったような気もするけどハッキリと思い出せない。とりあえずしっかり浮かんだのは、山手線に乗っていたら目の前の別の電車に中学の同級生が乗っていたときのこと。わたしたちが成人したかしないかくらいの年代だった。お互いがそれぞれの満員電車のドア側にいて、気づいたのは同時だったような気がする。2人とも「あーーーーーっ!」という顔(具体的にはクチを大きくあけた)をして手を振った。隣の線路で、途中まで同じ進行方向に走っていたので見えなくなるまで互いにガンガン手を振り続けた。卒業してから一度も会ってなかったし親しいわけでもなかったから名前も思い出せない。これから先も会うことはないだろう。けれども、バッタリ&電車並走という類まれなる遭遇、あれはよかった。もしまたそんなチャンスがくるとしたら、今度こそ完全マスターした天皇陛下の手の振り方で挑みたいと思う。