夜分に失礼します。「またネタなしかよっ!」と怒りの声も幻聴のように聞こえてきますが、読者優先のサイトではありませんので念のため。
私は今日、大江戸線の車内で、一風変わった人を見ました。そのことを忘れないうちに記録しておきたい。その一心で、日光蕁麻疹による腕の痒みに耐えながらキーボードを打ちまくっております。
電車に乗り込んだら、眼の前のシルバーシートにヨレヨレのじいさん(推定80歳)が負け面で座っていました。見逃すとこでしたが、Tシャツがストリートファイターの女キャラが皆で戦っている図柄。「はあ……じいさんわかって着てるのかな?それとも孫のかな?」と思って眺めていましたが、よく見ると帽子(キャップ)にキャプテンEOのロゴが!なんだかよくわかんない趣味だけど、じいさん、すごくカッコイイ……とホレるところでした。私はブランドというものを最大の詐欺集団として常々憎んでおりますが、やはり人間は、外見で判断するべきときもある、ということです。そんでじいさんは、手品のようにどこからか杖を取り出してきて勝ち誇った顔で、降りて行きました。
そのあと、入れ替わるように長い白髪を三つ編みで一つにまとめた初老の女性(推定70歳)が乗り込んできました。こちらは最初から勝ち誇った顔をしていました。さきほど、ファッションに翻弄された私は、またしてもTシャツ、こちらは一瞬で目に飛び込んできました。「
有権者は有言者」というアイロンプリントしたような文字がデカデカと有言者を主張しているからです。たしかに言いたいことがいっぱいあるようなババアでした。こういう女性に絡まれるとやっかいです。私は小心者ですからひたすら目をそらす努力をしましたが彼女は次から次へ、私の気を引く行動をとるので大変でした。
まず、私の目の前に座るや否や、靴と靴下(登山用っぽいやつ)を脱ぎだして、足首に湿布を貼りだしました。一連の作業が終わるとこちらも手品のように、ハンカチくらいに丸められた物体を広げ、いきなりカーディガンとして着衣。寒い寒いのジェスチャーを繰り返すのに飽きると、今度は目薬を取り出して、走る電車の中で巧みに目薬を注しだしたのです。それでなくても目薬を注す行為は難易度が高いうえに、こちらは揺れる電車の中。しかも口は閉じたままです!私への挑戦だと思いました。
頭にきた私は、何か対抗するものはないかと試行錯誤しましたが、あいにく小道具など持っておりません。しかたないので空いた車内をいいことに、「娘さん、よーく聞ーけよ、山男にはあ、ほーれるーなよー」と、そこしか知らないワンフレーズをリフレインしながら歌いましたが、敵は1ミクロンもビクともしませんでした。それどころか、頭をヒザのあたりまで下げて前かがみになり、両腕をダランとさせてきました。自慢の長い髪を見せつけるつもりか、身体の柔らかさを自慢しているつもりなのか判断に困りましたが、「てめえの歌なんか聞いてられない」という態度の表れだということに違いありません。
しかしババア、そのままの柔軟姿勢でひと駅、ふた駅と、微動だにしないのです。車内に入ってきた人が「ギョ!」として違う席へと踵を返すほどの異常なオーラを発していました。
ま、まさか……ババア、気を失ったんじゃ……有言者ですからとにかく言いたいことがありすぎてなんだかよくわからないまま昇天したのかもしれません。よし、次の駅を過ぎてもまだ気を失っていたら声をかけてみよう。そう決意した瞬間、一気に正気を取り戻して風のように三歩位の大股で、ドアに向かい、ホームに降りて行きました。思わず「え?」と声が出そうでした。出そう、というか、あまりにもびっくりしたので本当に発していたのかもしれませんがもうなにもかもわかりません。
ところでぜんぜんカンケーないですけど、「土屋さん、ネットでよく書いてるけどお腹ぜんぜん大きくないじゃないですかー」と初対面に近い人に言われたので「ふっふ、じゃああとで見せてあげようか?」と言って、エレベーターの中で見せたら「あ……」と言われました。思い返すと、密室の中で腹を晒す行為はまるで変質者のようだと思いました。相手をぎょっとさせて、なんであんなにうれしいのか自分でもよくわからないのですが、世の中の露出系変質者というのは、スタートはすべてこのような偶発的な出来事だったのかもしれません。40歳にして目覚めるとは大変です。犯罪者にだけはならないよう、気を引き締めて生きていきます。