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中学の時、
続くかどうかは問題ではない。やろうという気持ちが大切なのです
と担任の宮坂がオカンをなだめるようにいつもいつもいつもいつも言っていたのを私はことあるごとにお思い出します。
これはもう続けなくてもいい、やろうと思うだけでいい、そう言ってるのと同じことではないでしょうか。自分にとって都合のいい言葉と言うのはいつまでもココロに残ります。
もう二度としません
悪行のあとに、私は必ずそう言いましたが、そのとき私は本当にそう思っていたのかそうではないのかはすっかり忘れてしまいました。っていうか思ってるはずない。そして必ず宮坂は私の腐った目をまっすぐに見て、
『キミを信じよう』などとドラマのようなセリフを言うのでした。ドラマ仕立ての眼光を見て吹きださない術はとっくに習得していました。本当に彼女がそう思っていたかどうかは定かではありません。この先も私には一生わからないでしょう。それがよっぽど気に入っていたのか、宮坂は色紙にも同じ文句を書いていました。ま、誰にでも書いていたんだろうな。
そういやあ、宮坂はいつもタンバリンを持っていて、廊下を歩くときに太股あたりで叩きながら歩いていました。
ハイ宮坂ですよー宮坂が通りますよーもうすぐ宮坂が近づきますよー
と知らせているつもりなのか、タンバリンなしでは歩けない体質なのか、あるいは突然変異の体の一部なのかそれもまた私にはわかりません。
ついでに宮坂は、指一本触れたことないダンナとの間に、子どもができたと中2のホームルームで発表しました。なにもかもわかりません。
わかったところでどーってことない。
世の中はそんなことで充満している。