在りし日のカチ割れ
新宿に展示してあったドタマカチ割れこけし。
他に2体、計3体。
容姿も心もこけし人である
ハルミンさんが、どうしても、なにがなんでも、逆流性食道炎を押してでも「カチワレ見たい」というので同行した。ところが、尋常ではないまちがえ方で、ハルミンは1つ先の駅で待ち構えていたうえに、合流時にはそのひとつ先の駅を狂ったようにほめちぎるという暴挙にでてなにかをごまかそうとしていた。しかも私の髪形をマネており、問い詰めるとひらきなおったのであきれ果てる。
そしてハルミンは、接近して細部を検証するためガラスに頭をぶつけたり、後ろに回ってみてみようとしてガラスに頭をぶつけたり、ようするに片っぱしからガラスに頭をぶつけていて、「ああ…それでこのかたは……」と色々と納得することとなった。
そのあと、不気味な魚を食べた。正確には食べてない。
まるでバイオハザードの
ノスフェラトウだ。私はあれを思い出すと途端にだめになる。まったく薄気味悪い魚だった。
私が〆の白玉ぜんざいを食べているななめ前で、店の人がテーブルの上をあらかた片づけたあとじっと鎮座していた。和装の若い女だ。あまりにも私を凝視しているのでうすら寒くなり、半分冗談のつもりで
「え、まさか食べ終わるの待ってんすか?」
と聞くとそのまさかだった。
屈託のない笑顔で「はいっ!」と返事を返され、私はニヤけながら、お茶漬けを流し込むように3割ほど残っていたぜんざいを一気食いした。べつに閉店時間がきているでもなし(間近ではあったが)、他に客もいたし、冷静に考えるとあれほど焦ることはなかった。
心に余裕があれば、白玉をノドに詰まらせ悶絶する演技のひとつやふたつできたものを……。
この年になっても初体験というのはやたら動揺するものだ。実力が出せない。
あの階段のとこ、歩きたいなー
と思って写真を撮ったら、魚が浮いていた。
被ばく過敏で、日毎神経をすり減らしている同僚に見せたらまた放射線のせいにするにちがいない。面白いから来週見せつけようと思う。
今日の学び:被ばく過敏と知覚過敏