ハチコラム 観察の練習
以前も少し触れた、菅さんの「観察の練習」。
献本いただいていたにも関わらず、引越しのドサクサで今日受けとることになった。
事務所(スタッフ用)と家(子供や友人用)に置いておきたいと思い、ちょうどもう一冊と思っていた矢先だ。
菅さんのイメージは、ビジュアル面でいうとシンプルだと思う。
シンプルだけど、少し、ワナがある。
(ご本人の容姿という話ではない)
これはきっと、知的なワナだけれど、観るものにそうとは気付かせないワナと余白が潜んでいる。
余白は課題に近い。
読者(観る人)に、考える隙を与えてくれる。
以前展示をされたときも、また、ディレクターをなさった展示会でも、展示会の一部を観ても、どれもこれもそうだった。
そこにはない何かを、鑑賞するものが考える余白があった。
シンプルであることはカンタンそうに見えて、実はとてもむずかしい気がする。
洗練されていなければ、それはただの手抜きになってしまう。
ブックデザインひとつとっても同じだ。
考え抜いて作られた本は、ムダがなく、美しい。
私は彼を「知っている」と言えるほどの付き合いではないけれど、イメージとしての菅さんらしい本だな、と思った。
デザインのことばかりが感想なの?
と思うかもしれないけれど、これ、文章もまったく同じで、菅さんらしいよい本だった。
計算しつくされた削りのテキストがとても読みやすい。
ふだんならスルーしてしまう、町の中、生活空間、日常の中に潜む「あれ?」というものに目を向けてみたくなる内容だ。
ちょっと立ち止まって、少し考えたりふしぎがったりしてみると、毎日単純にリピートされる生活も、好奇心によってより充実したものになっていく。
考えることは、何もむずかしいことではなくていい。
小学生、幼稚園児と同じレベル(むしろそのほうがいいかもしれない)で、そのへんに転がっていることからいくらでも発想は広がっていく。
あらかじめ用意されたものでなくても、ネットで検索しなくても、展示会で何かテーマのあるものを見なくても、【考える】は芋づる式にどんどん増幅する。
これが実は、大人にとってもアイデアが広がるいいトレーニングになる。
考えることに、答えはない。
いくらでもあるといったほうがいいのかな。
だから、それを楽しめるんだと思う。
デイリーポータルZのライター陣は、わりとこういう身のまわりを面白がることが好きだ。
私も見逃さないように歩いているけれど、集中してしまうと周囲が見えなくなって無言で近づいてしまう。
そのせいで
「よくここまで生きてこられたね」
と感心されることが多々あるので、危険を冒してまで観察する必要はないだろう。
小学校から大学まで、学校の図書館図書室に置いてあるといいのに。
ほら、(宮部からもらった)肉との相性もバッチリだよ。(画像参照)
観察の練習 | 菅 俊一 |Amazonラベル: ハチコラム