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2026/07/26
[#]ベトナム奇行備忘録[1] 寝台車の食を牛耳るホスピタリティウーマン

 2026.7.26〜8.3

9日間のベトナム横断旅。旅行記は同行のイスクラさんが書いてZINEにしてくれるので、わたしは備忘録だけに留めておく。時系列は多分バラバラです。

メンバーは、フードカメラマンイスクラ、陶芸家esou ceramics菊川、そして途中離脱した友人の克子。(ちなみに写真はほぼほぼイスクラさん撮影によるもの)

ベトナム着後、一番最初に入った店はバインミー(フランスパンサンドイッチ・ベトナム国民的な軽食)専門店。わたしがオーダーしたのは目玉焼き2コ入りだったのだが、なんとひとつも入ってなかった。にも関わらず、わたしの恨み節がそこまで強くなかったのは、あまりにも旨いオレンジジュースで相殺されたからだろう。果実をギュッと絞った感があり、濃厚だ。そして甘い←ここ重要。

テーブルに置かれていた醤油みたいな調味料をバインミーにかけたらこれもまたすこぶる旨い。コクがあり、少し甘めでうまみがある。黒猫のロゴが入っていた。その後スーパーに行って同じ醤油を購入。それからというもの、旅行中はずっとこの黒猫ボトルを持ち歩き、あらゆる料理にかけて食べることとなった。ちなみにこの旅で食べたバインミーの数は20コ。バインミー旅と言っても過言ではない。

●狂気のピンクハウス

わたしが『狂ったピンクハウス』と名付けたホーチミンのカフェは、Rose Villa Saigonという施設だった。イスクラさんのTwitterによると、その昔会員制クラブだったところで、今は宿泊可能な高級パーティ会場とのこと。

こ、高級!? たしかに豪華絢爛っぽさはあるものの、とにかくドぎついピンクだらけですべてが嘘くさい。とはいえインスタ映えには最高の施設だろう。ホーチミンを訪れた際にはアミューズメントパークとして一度は行っておいてもいいかもしれない。狂ってるので。わたしもインスタライブをしてしまうほど脳がヤられてしまった。今チェックしてみたらInstagramもある。カメラマン撮影なのか、いい感じの写真がアップされていた。ちなみにオーダーしたストロベリーバナナスムージーはとてもおいしかったけど、乗っかっていた食用花までフェイクくさく感じて不気味で食べなかった。小汚い屋台や露天、市場の食べ物は何の躊躇もなく食べられたのに。

●寝台車の食を牛耳るホスピタリティウーマン

ベトナム統一鉄道の寝台列車に乗りサイゴンからフエへ。ここでもまたオレンジジュースがすこぶるおいしい。車内販売にあるまじき旨さ。東京で1,700円くらい出してもわたしは満足するだろう。もしかしてベトナムはオレンジジュース天国なのではなかろうか。それからしばらくは、どこに行ってもオレンジジュースばかり注文していた。数日後もまた同じ鉄道の寝台列車に乗ったので、喜び勇んでオレンジジュースを買ったものの、驚くべきことにフツーのペットボトルで出てきた。ベトナム各所のコンビニでもよく目にしたOranginaだ。味も薄く果実感もゼロ。こりゃまったくちがう飲み物だ。「はぁ?」楽しみにしていただけに無念さがハンパない。同じ列車なのにいったいなぜ……? そこで我々は推理した。

結論。初回の寝台車、車内販売兼食堂車の女性の計らいにより、彼女が家で仕込んだ自家製オレンジジュース&コーヒーを持ってきていた。(と推測)

プロフェッショナル:証拠1

「『ワゴン』を撮影させてください」と申し出たにも関わらず、いきなりものすごい古典的なポーズと表情でキメてくれた。ここからしてサービス精神の塊であった。

プロフェッショナル:証拠2

食堂車に行くと、件の女性がシャキシャキと働いていた。食事オーダー中に「みんなジュースよね?」という感じで全員がほぼほぼ強制的にオレンジジュースになる。そのあと車内の様子を撮ろうとスマホを構えたら、有無を言わさぬスピーディーな動きでスマホをむしり取られ、必殺仕事人のような顔で我々4人を何枚も撮影してくれた。食堂車は自由撮影禁止のようだ。過去に何かトラブルでもあったのだろう、他乗客の写り込みを断固阻止する姿勢を感じた。

プロフェッショナル:決定打になった動かぬ証拠3

「なぜ同じ列車でありながらオレンジジュースの質がてんで違うのか?」その謎を解明すべく、わたしたちは初回寝台車の画像を漁った。そこにあったのである。動かぬ証拠が。

初回、女性はペットボトルに入ったオレンジジュースを氷の入ったプラカップに注ぎストローをさして渡してくれた。これは食堂車でも車内販売でも同じだった。その時の写真をよくよく見ると、ジュースが入っているのはふつうのミネラルウォーターのペットボトルではないか! よりおいしいオレンジジュースを乗客に提供しようと、女性が家で仕込んできたに違いないという結論になった。ちなみにコーヒーも、1度目と2度目の列車では作り方も味もちがっていたとのこと。日本でこんな自由な振る舞いは衛生上の観点からも許されないかもしれないが、ここはベトナム。さすが生肉の塊や鮮魚を路上で売っているだけのことはある。究極のホスピタリティだ。本当に思い出すだけで口の中がじわっとするほどおいしいオレンジジュースだった。

●菊川女史によるただならぬ警戒心 その1

イスクラ・菊川両者は、旅慣れており年に数回海外旅に行っている。そこで痛い目にあっているのか、とくに菊川女史の海外における防衛本能がハンパない。よくいえばリスクマネジメント、悪くいえば被害妄想に近いものがあり、呑気なわたしからするとその過剰なる警戒心は一種の珍獣を観察しているようでとても面白おかしかった。本人にしてみればなかなか大変なこったろう。

これもまた2度目の寝台車でのこと。車内販売にきた若いお兄ちゃんからコーヒー3杯オーダーして飲み始めたところ、「ちょっと待って……?」と、支払った額が3で割り切れないと言い出した。たしかに割り切れる数字ではなかったものの、大した額でもないし小さな計算ミスということもあり得る。けれどもこの件で、「ぼったくられた」という確信に満ちてしまった菊川女史に火がついた。

寝台の車内販売は何度もくる。ワゴンに乗せてくる時もあれば、果物のみをレジ袋にいれて販売することもある。バインミーやドリンク、フォーなどさまざまだ。ドアをノックして開けてきたり、あるいは大声で知らせてきたり。次に例の『3で割り切れないお兄ちゃん』がきた時には、ワゴンが2台渋滞になっていた。わたしが何か買おうとしたその瞬間、菊川さんが「このお兄ちゃんちょろまかすから! (他の人から買ってー)」と大声で言い出した。笑ちゃったけど、相手に日本語が通じなくてよかった……とも思った。

●菊川女史によるただならぬ警戒心 その2

この日本語での警戒語がプラスになった事例もある。どこかの駅で、手荷物一時預かり所を探していた時のこと。駅の端にドアが開きっぱで開放的な警備室のようなものがあり、無人だったけれど大きなテーブルに灰皿が置いてある。「ここじゃん?」などと覗いていたら、車から降りてきたおじさんが手を上げながら何やら叫んでいる。「おいおい! 俺が警備員を呼んでやるよ!」的なことを言っているようだ。すかさず菊川さんの警戒センサーが働き「このおじさんはヤバい。このあとタクシーに乗せられてぼったくられるかも!」などと言い出すや否や『タクシー』に反応したらしきおじさんは「タクシーじゃないよ、これ俺の車だよ! ここの職員だよ!」などと言いながら部屋の中の集合写真を指さしている。たしかに制服を着ているご本人がニッコリ笑って映っていた。実際は非番だったこのおじさん、交代の人に連絡をとってくれて無事荷物を預けることができた。

こちらは呼ばれたおじさん、気のいい親切な二人だった。集合写真が見えますね? ここで"ぼったくりタクシー“に間違えられたおじさんが笑顔で映っております。

●菊川女史によるただならぬ警戒心 その3

女史のリスクマネジメントは人間だけにとどまらない。冷蔵庫さながらのパワフルエアコンで効きすぎた車内でも絶対に布団をかぶろうとしないのは、トコジラミを警戒してのことらしい。最初の寝台も寒かったけど、2回目はもっとひどく凍死するかもしれないと思った。

こんな対策を試みたくらいだ。

これは最初の寝台車。下がわたしで上が菊川女史。ぜったいに布団を被らない気骨ある寝姿。

そいえば、彼女が探してくれて行った路上の食事屋さんでも警戒心は発揮された。とてもおいしいうえに雰囲気も店の人もすこぶる良く、何より犬がいる。しばらくその空気感を味わっていたかったのだが、いつもはゆっくりのんびりしている菊川さんが食後に即立ち上がり、「早くここから去りましょう!」と言い出した。どうやら席の隣に木々が生い茂っていて、蚊がいる可能性がある=デング熱の危機ということらしい。

絶品のホイアンチキンライス。あーーーーおいしかったなあ。店は家族経営で、お客さんも地元の人しかいなかった。食事を運んでくれるお兄ちゃんが煙草を吸いに少しだけ離れた場所に行ったら、犬も一緒に着いていき、うれしそうに尻尾を振って彼を見上げていた。自分的には、今回一番異国を体感できた夢のような空間だった。

まだまだベトナム備忘録&菊川女史によるただならぬ警戒心シリーズは続きます。ひとまず、ここまで。





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