また久しぶりに行動全てがクチに出てしまう病に罹った土屋遊です。みなさん、なんでもかんでもクチに出してますか? (性的なイミではなく)
#
語り部の土屋がお送りする、マリ子ちゃんの思い出
いつのころからかわからないけど、インターネットがこんなにまっとうなことを語る人ばかりで埋め尽くされてしまうとは思わなかった。埋め尽くされているのではなくわたしの巡る界隈でブチ当たることが多いのだろう。でもそれは残念だ。少なくとも類い稀な才能を発見するのが容易くない。「面白い」という言葉が、「笑える面白さ」ではないコトとして使い果たされる。それはあまりにももったいない。
実生活でも語ってばかりなんだろうか。青年の主張ともちがうし、説教? これもちがう。語り部? いやぜんぜんちがう。いやうちのオトンだ。オトンで溢れている! これはすごい!
毎回ホームルームの時間に手をあげてわたしの悪行を滔々と語ったマリ子ちゃんという女を思い出す。わたしが空き家を探検してドアをブチ壊したことや、ミドリガメの砂利をよそんちの窓に投げて逃げたとか、運動会でおんぶ競争をして6年生のお兄さんのケツを蹴りあげていたことなどを迫真の演技でいちいち語っていた。女優だった。小2にして大女優。最後にはかならずこう言うのだ。
「そういうことはしてはいけないと思います!」
アゴをあげてものすごく正しい顔で発表するのだ。悪いがわたしは上福本先生に誰よりも好かれていた自負がある。チクられたことよりも、先生を苦笑させ困らせているマリ子ちゃんが恨めしかった。あのくりくりの栗毛はたしかにかわいかったが、天パーだったので思春期には苦労したことが予測できる。
わたしは小2ですでに悟ったのだろう、正しいことって、面白くねーな。
言いすぎだろうか。だとしたら、正しいことは、面白いことがあまりにも少ない。どうだ、これでいいか。正しいか否か、そんなことはどうでもいいから、わたしの前から『正』の字を消して。世の中もネットも、そんなきっちりした文字が溢れすぎている。わたしは黒いターバンを目に巻いて、あるいは工藤ちゃんのアイマスクを目にかけて、『正』の字を華麗にかわしながら歩き続けたい。