ヒャッホッホー!なんの呪いか、日本語入力ができなくなって、鬱々とした一日を過ごした。息子が見ていたと思われるエロ動画のせいにして八つ当たり。久々に親子ゲンカをぶっぱなしたが、Officeをインストールしなおしたら、まんまと直った。
マヌケぶりを忘れないうちに、早く書きたかったことがあるのだ。
昨日か一昨日、夕飯を食べに行った実家でのこと。食後、私はうっすら気分が悪くなっていた。オカン専用のソファを陣取り、のらりくらりしていると、食器をすべて洗い終えたオカンがやってきて、「あら、お弁当箱洗うの忘れていたわ」と私の弁当箱に手を伸ばした。「いいよ、私が洗うから」と言ったのだが、洗濯ババアの異名を持つ、洗い物命のオカンに対して本気で言ったのではない。そもそも彼女は他人(少なくとも私)に、自分が買ったお弁当箱を洗わせるはずなど決してないのだ。たぶん、私は弱っていたのだろう。その後、水滴ひとつ残さず、すべてを完璧に片づけたオカンはやっと腰をかけ、老眼鏡を三本も重ねてかけて、書きかけの原稿にせっせとペンを走らせていた。私は本当に弱っていたのだ。つい、
「ママ、いつもありがとうございます!」と朦朧としながら、それでも小2くらいの精神年齢でもってフザけて言った。忘れてしまったけど、その時オカンは黙っていたように思う。私のたわごとが、シカトされるのはいつものことだ。気にもとめなかった。そんなことよりオカンが書き物を始めると、邪魔をするといきなり発狂することを思い出し、私はシャービックも食べずにとっとと退散することにした。
深夜、私の家にいきなりオトンがやってきた。聞けば、私が自殺するのではないかと家族で話し合い、代表して様子を見に来たという。わけが分からなかった。私はそんなに陰湿な表情をかましていたのだろうか。それとも、最近おびやかされているヒール女の霊が憑依しているとでもいうのか、死相が……?
理由を聞いて、私は愕然とする。
だって、おかしいだろう、あいつが改まって『ありがとうございます』なんて言うわけないだろう、自殺をするに決まってる、そうでなければそんなセリフを吐くわけがない、という結論だった。オカンは最初、オトンの突飛な発想を相手にしていなかったが、「そういえば『お弁当箱洗う』なんて言い出して……」「ほら!やっぱりだ!」そしてお前が行け、いやH(弟)が戻ったら、いや、あいつは意気地なしだから怖がっていかないはずだ、お前が行け、私やだわ、あんた行きなさいよ!と押し問答になったそうだ。その間、自分たちはなんかズレてるとは微塵も思わなかったのであろうか。
それにしても、私はすこぶるおかしかった。オトンが半分怒ったように帰って行ったあとも、私はひたすらうすら笑いを浮かべていた。心配してくれる家族がいることがありがたいことには間違いないのだが、それにしても、この私が、世界中の人が死んでも生き延びたいと宣言している私が、自ら命を断つなど、するはずがない。彼らもわかっているはずだ。にしても、私の「感謝の発言」は、あまりにも現実離れしていたのか、思いのほか奇怪に映ったのだろうか。もう二度と、誰にも、決してやさしい言葉などかけません。そう誓うと、さらにまた貪欲に生きる執念がウジ虫のように湧いてきた。
いろいろと気をつけろよな。