アンリ・ルルーのキャラメルに関しては並々ならぬ恨みがある。
ある個展の受付で「ご自由にどうぞ」と書かれていたのでふたつみっつ取ろうとしたらお姉ちゃんに
「お一人様おひとつです!」
とキッと睨まれたことだ。
かなり食い下がったがどうしてもひとつしかくれなかった。
今でもケチだと思うしケチだと思うしドケチだと思う。心底思う。
後日、その受付のお姉ちゃんと再会した。
瞬間、「あ、あのアメくれなかった人!」と叫んだのだが、複数の証言により彼女はそのドケチ女ではなくわたしの勘違いだったことが判明した。
それでも「アメの人」という印象はぬぐいきれない。
そこから(ドケチ)という単語だけが消滅したかわりに、わたしは「ちゃん付け」で呼ぶことにした。
心の広い彼女は、わたしが「アメちゃん」と呼ぶことを容認してくれている。それどころか「なんか、かわいい」とさえ言ってくれている。
勘違いが招いた美談、である。
おおげさなのは承知している。なにが言いたいかというと、手土産はアンリ・ルルーで、ということかもしれない。フルーツ系でよろしくお願いいたします。