息子のオンが中学のとき、あれだけ血気盛んに挑んだバスケの区大会で敗北し、ケロッとして帰ってきたことがある。
「7人退場」
彼は誇らしげにそう言った。
たしかバスケって5人でやるもんだよね……?
「バスケは格闘技なんだよ」
負けて泣くということを知らない。勝って泣くことはもっと知らない。これはもう素直に知らない。
わたしは陸上部だったが、同じように負けても勝っても笑っていた。
練習イコール記録だと思っていたから、悔しいと思うことなど1度もなかった。負けたのはぜんぶ練習のせいにしたし、勝った時は才能のおかげだと思った。上位陣の集まる競技場で、今にも死にそうな他校のトレーニングを「あらららら大変だなー」と眺めながら、わたしたちは露出オナニー男を追いかけたり、創作合唱ばかりしていたから、全国に行くのと、ふざけた練習とどちらか選べと言われれば、やっぱりわたしは今でもふざけた毎日を選ぶんだろう。
泣き上戸だということを半分自慢のようにする人がいるが、わたしは「泣く」行為、そのほとんどが甘えだと思っている。泣いたから感情豊かだとか、心から思っているとかそれは間逆だとも思う。その話はいずれまた、じっくり書いてみたい。
これは前々から思っていたことではあるが、泣き上戸だったわたしが、一切泣かなくなってしまったことで確信にも似た気持ちになっている。反論はあるだろうが、バカスカ泣くことはとても楽だということだけ、とりあえず書いておく。