昨年再発行した「ふし日記」のまえがきを転載

毎日、死にたいと思っていた。
姑息にも、こんなパワーワードを提げて2014年に発行したふし日記。
男との破局によって精神が悲鳴をあげ人格が一変してしまった時、ブログに淡々と日常を記録していた1年間である。今回の『改』は、わりとガッツリ加筆修正した。
遠くない将来、自ら死ぬだろうと思っていた2013年。ブログを書いていたのは"遺書"としてネット上にその記録を残したかったからだ。人生の半分をインターネットの中で生きてきたわたしには当然のことだった。
当初紙媒体にするつもりはなかったけれど、翌年一冊にまとめた時、ふし日記はもう"遺書"の存在としてはわたしの許を離れたように思う。人生に終止符を打ちたい思いにまだまだ苛まれていたものの、手元に一冊も残したくはなかった。本はおろか、データまで消してしまっていた。
10年後の今、再販を検討するにあたって友人から借りたふし日記を再読した。ヘドロのような闇のウイルスに自分の細胞が冒されていた中で、驚くべきことにわたしは人と会い、食事をして、会話もしていた。しかもたくさん。
すべての行動は自身の希死念慮と戦っているように見える。深い海の底で手足を無茶苦茶に動かしながら、もがいてもがいて水面にあがろうと必死になっていた。なんと浅ましく、無様なことだろう。
その一方で(野生の本能がそうさせたみたいでちょっとかっこよくないか?) と思う自分もいる。排水溝のゴキブリも歌舞伎町のドブネズミも、サバンナの動物たちもその直前まで死に抗う。脳では消滅を願いながら、わたしの本能がそうはさせなかった。何より今、わたしは生きている。
毎日、死にたいと思っていた。ちがう。死にたくなくて必死だった日々の記録です。
文庫サイズ 184ページ
著者・デザイン 土屋遊
装画 我喜屋位瑳務
デザイン・DTP 高瀬克子
はちみせとかポポタムに売ってますので読んでない人は買ってくださいっ!
「ふし日記」販売ページ https://83s.shop/