【ん】ん。
「ん」を縦横無尽に使いこなすスペシャリストとして、今日のお題は「ん」でいきます。なに言っちゃってんの? と思われるかもしれませんが、わたしは、「ん」の持つバリエーションに日頃から感服しており、尊敬の念を抱きつつ、かつ駆使しております。「ん」はうんこをふんばる時のコトバとして軽視され、しりとりでは邪険にされて罪人扱い、コトバにしてコトバにあらずみたいな冷遇をされていますが、わたしほど「ん」を愛し、多様性に感謝している人間はほかにいねーよ。あまりにも過剰にホメすぎて最後はめんどくさくなりましたが、50音お題の〆記念として、門外不出であった「『ん』活用法 徹底ガイド」をお送りします。
基本「ん。」難易度☆☆☆☆☆
そうです、「ん」に「。」これはもう息をするように発してきた言葉です。TwitterやMAIL、メッセージなどでもさんざん打ちまくってきました。「ん。」なくして、土屋遊は語れません。たったヒトコト、一文字で、「わかった」「了解」「なるほどー(性的な意味じゃなく)」「あっそ!」「そーですね!」「はいっおわりー」など、その時々で七変化していくのです。こんな便利でカンタン、しかもスピーディーな文字が、かつてあったでしょうか。あるわけねーよ。ちまたでもこの「ん。」は普及してきたようで、友人知人も容赦なく「ん。」を乱用するようになりました。しかもご丁寧にも「ん。」の送信後、「キミのマネ」などと、盗用後に開き直るケースも出てきました。まあいいでしょう。今後も「ん。」の伝道師として、布教活動にいそしむつもりです。
アレンジ「んっ」難易度★★★★★
踏んばっているのではありません。これはですね、ビミョーなラインで少〜しだけ語尾をあげるのです。あーーーだめだめ、完全にあげてしまってはダメです。それでは「はい? なんスか?」と言うことになります。(なんスかバージョンは後述します)この「んっ」はですね、人に依頼するときにとても重宝するのです。おねがいするとき、たったヒトコトですませられる、しかも相手は、ねだられたという自覚がほぼありません。でもつい応えてしまうというミラクルなコトバです。この微語尾アゲは、日進月歩で培ってきたものですから、シロウトの方が手を出すと大変な目にあいます。まずは基本をマスターしてから挑みましょう。
アレンジ「んーーーーーーーーーーーーーーーー」難易度★★☆☆☆
「昨日の飲み会どうだった?」「テストの感触どーだった?」「ボクのセックス、どーだった?」など、「どうだった?」に対して、答えるのがめんどくさいとき、あるいは答えに窮するときなどに活用できる「どうだった対抗」。★をふたつにしたのは、あまり声が高いと、逆に、相手に期待をさせてしまうからです。首をカクンとバカみたいにかしげながら目を細め、目線は10時の方向で、あくまでもどんよりと低いトーンで息の続くかぎり「んーーーーーーー(以下略)」と言ってみて下さい。相手はそれ以上なにも聞かないと思います。
アレンジ「ん?」難易度★☆☆☆☆
ぼーーーっと上の空で話を聞いているときでも、合間に小さく「ん?」を入れることによって、わたしはアナタの話を諦聴していますよ、というアピールこのうえないことになります。ですが、「ん? ん? ん?」と乱用しまくると相手をバカにしていると取られる危険性をはらんでいますので要注意です。
アレンジ「んーんーんーんーんー」難易度★☆☆☆☆
訳1:眠たい
訳2:いい加減その話、飽きた
訳3:アナタの話、聞いてません
相手の話の途中、テキトーな相づちを打っているとわざわざ思われたいときに有効な「空相づち」です。まあ、たまには大乱闘に発展したい気分の時もあるでしょうから、シーンに合わせてご活用ください。
アレンジ「ぅん〜ん?」難易度★★★☆☆
「納得いかねえ!」というときにご使用ください。初心者の場合、「ぅ」を省いてもけっこうです。「やんのかゴラッ」と同義語とお考えください。
アレンジ「んーーーーっ!」難易度★★★☆☆
なにかごちそうになったとき、おいしい! という大げさなアピールです。アナタはTVレポーターじゃないのですから、「まったりとした舌触りに......外はカラッと、中はふんわり〜」などという、よけいな説明は不要なのです。口にモノを入れたまま、目を見開いて「んーーーーっ!」とテーブルを両手でドンドン叩けば、ごちそうしてくれた方もおおよろこびのことでしょう。パフォーマンスはやりすぎということはありません。わざとらしさが頂点に達していても、お相手は悪い気はしませんので安心して大げさに振る舞いましょう。
特別編 アレンジ「んーんーん」難易度★★★★★
訳:やーあーだ
濃厚で親密で密接、ようするに肉体関係にあるかどうかが基準となります。ステップとしてはまず、なにかあるごとに「やーあーだ」と言っておかなければなりません。この時の発音は「カルマ」と同じです。そして熟した頃にコレです! 「んーんーん」。相手はすぐに「やーあーだ」という拒否・否定だと察します。だからといってなんだか怒る気にはなれない、ついご容赦しちゃうという魔法のご容赦コトバです。いい年こいてなに言ってんだこのクソババアと思われるかもしれませんが、まあどーでもいいです。
ん。
訳:はいっおわりー
こんなときのどうする「ん事典」のかわりに......