【へ】偏平足 ヘンペイソク(
Wikipedia)
「今度のBlogのお題は『へ』なんだけど、なにがいいかな。『偏屈』『変人』あたりは書きやすすぎてつまんないから名詞にしたいんだよね」
と言ったら、
「そうだね、『偏屈』『変人』はそのものだからね」
と返されて絶句した土屋遊です。こんにちは。生粋の偏屈や変人さんたちにとんだ無礼を......。
ちなみに、一児の母である
高瀬克子さんは
「『へ』でいいじゃん、『屁』で」
と言っていました。
……ということで、そこから出た『偏平足』を今日のお題にします。
偏平足といえば、同級生のTを真っ先に思い出す。
俊足だったTだが、自分の偏平足をたいそう気にしていた。足のウラの、誰にも見えないそんなところにコンプレックスを持つTがまったく解せなかったし、滑稽でもあった。
そして迎えた小学校最後の運動会である。
赤、白、互角の戦いの中、みんなが一丸となって燃える騎馬戦で佳境に入った。
裸足になって準備のために並んでいる時、わたしは対戦相手である赤組のTに向かってこう言った。
「T、足のウラ、みせて」
突然、Tが泣き出したのである。
え! ええーーーっ!?
裸足で校庭を歩けば、とうぜん偏平足であるTの足のウラは土で真っ黒になる。それを見越して、戦意喪失させるつもりではあったがまさか泣くとは……! 作戦成功にもほどがあるでしょう!
「Tなんにもしてないのに、Tなんにもしてないのに、アソビのいじわる~」
ヒックヒック泣きながら、誰にともなく訴えるT。
あ~あ、泣かせちゃったー。というみんなの冷たい視線。
数人に取り囲まれ、なだめられるTを横目にわたしはシカトをきめこんだ。
こんなことに翻弄されていては、リレーの次に楽しみにしていた騎馬戦を楽しめないっ!
だが、その後の騎馬戦のことは
「イケーーーッ!」
と、自分を鼓舞するように叫んだこと以外、まったく覚えていない。
『騎馬戦』や『偏平足』の単語を耳にしたとき、まっさきに思い浮かぶのは
「Tなんにもしてないのに」
という、あのセリフなのだった。
泣き虫Tは、学生時代、わたしたちの通った塾の講師のバイトをし、今では立派に小学校の先生をしている。思えば、『偏平足』イコールTという方程式がわたしの脳内にインプットされてしまったことは多少気の毒でもある。どちらにしても、何事もなかったかのようにケロッと仲直りしたはずだったが、結局わたしは、あの日のことに関して、いまだに「ごめん」と言えないのだ。まあ一生言わないだろう。
余談だが、「なんにもしてない」といえば、浮かぶ人がもう一人。
「わたしは何もしていないのに、子供を授かったのです!」
と、血気盛ん・精力全開な中2に向かってシャーシャーと言い放った担任宮坂は、指一本触れたことないダンナとの間に、子どもができたとホームルームで大々的に発表した。
わたしを見れば宮坂は
『キミを信じよう』
などという意味不明なセリフを口癖のように言っていて、ドラマ仕立てのあの眼光を見て吹きださない術はとっくに習得していたけれど、この処女懐胎には吹き出した。しかも相手は保健体育の教師である。おい、なに教えてんだ。
本当に彼女がわたしを信じていたかどうかは定かではないし、限りなくどうでもいい話だけれど、信じている相手に向かって、なんども「信じよう」と言うのは逆効果だということだけは学んだ。
あのセリフがよほど気に入っていたのか、宮坂はわたしの色紙にも同じ文句を書いていた。
どっかいっちゃったな~あれ。いまだに「なんにも」してないのかな~。
本日の、【へ】に関するオススメ本。
読みやすくってタメになる。(東京情報)
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